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風がそっと刀身を撫でる、それほどにささやかな、けれど、背筋を寒からしめる殺気にも似たものを感じ、覚醒した。
月のない、静かな夜だった。
他の刀達は、主不在のため『刀』に戻り、一刻の眠りについている。
現世から隔絶された『本丸』は、常に静寂であるはずである。
(……起こされたか……)
縁側に座る。そっと近付くもう一振りも、今は『驚き』とやらの悪戯を仕掛けてくることもなく、静かに障子の縁に体をあずけるにとどめた。
「……おぬしもやられたか」
「あぁ。念入りなこった」
「他にもおるか」
「いないだろうな。審神者なしに覚醒できるモノは少ない」
「……警戒されたものだのぅ。おぬしと同じ扱いとは、心外だ」
「俺だって驚きだ。あの三日月が、ここまでとは…予想外、予想外…」
「面白がっておるな?まぜかえすでないぞ。巻き込まれるのはごめんだ」
「……小狐丸、それも神通力のひとつか?何故わかった」
「……本気で言っておるなら、おぬしもボケがはじまっておるな、鶴丸」
ほんのわずか、夜の大気が震えた。
蝶の羽音のようにかすかな、艶やかな震え。
「お…っと…。……嫌がらせと取るか、ラッキーとやらと取るか…悩みどころだな」
立ち上がる。付き合う義理はなかった。
子供っぽい牽制と、優越の見せつけなどに。
「お、覗き見でもするのか?俺も混ぜろ」
「俺は眠る。鶴丸、おぬしも余計な真似はするでないぞ。……子供のやりようだが、あやつは本気だ」
壊されたくば、やるがいい、とまでは必要なかった。鶴丸もわかっているからだ。
「ふあ~~ぁ…。ま、ちょっとした余興にはなったか……」
あくびの『真似事』とともに、優美な掌をひらりと一振り、真っ白な姿は、朝霧が晴れるように空気に溶けて消えた。
本体の刀身に気を戻したのだろう。
長い永い刻を過ごし、ヒトの形のようなものを真似ることもできるほど、モノとして年を経た。それでも。
(人の肉を得ると、こうも変わるものか)
モノにはわかるはずもない。真似ることしか知らない。
愛などには届かない。
ただ、貪欲に、恋(こふ)るだけだ。
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わかりにくすぎたかも!(笑
三日月さんの閨のお相手は自分的には兼さんで。
『俺のものに手を出すなよ』という話。
うちの場合は兼さん総受け仕様本丸なのですが。
みかかねだとすると、手出ししそうな子が三日月にとっては小狐で鶴、ということで。
なので、読み手さんによって、小狐と鶴も配役替えが必要かな。
うちの場合は二股とかはなしの主義なので、この二人は兼さんに悪戯からかいをするものの、片思いやカプとして成立することはないです。
この二人も、うちでは兼さんに次いで受けの子達だからなぁ(笑
小狐さんの一人称は、審神者以外には『俺』。
口調は爺っぽいのと青年っぽいのの混合で爺多め。
三日月は逆で、青年多めでたまに爺かな。
難しいところ。
結局自分の好みで書いちゃうけど^^;